3 一般病棟入院基本料 ブレイクスルー

 奈須は、宿題の解答について検討がつかなかった。数日後、同年代の医事課長となった石崎裕樹(いしざきひろき)に、偶然に病院の廊下で出会った。石崎も人材育成プロジェクトで事務部から候補になった優秀な人材である。石崎は、面倒見が良い上、与えられた仕事をきちんとこなすなど、他部門からの評価も高かった。

奈須:出世したんだって?

石崎:自分も出世したくせに。

奈須:ところで、部長さんから宿題が出されたんだけど、なんで平均在院日数を短くする必要があるの?

石崎:おいおい、師長になってそんなこと言ってるの。教えてやるよ。1つは、平均在院日数によって診療報酬も変わってくるからなんだよ。この本を貸すから読んでみて。

奈須:こんなの読めないから、すぐに教えてよ。

石崎:今は、院長に呼ばれているから、夕方に医事課に来てくれたら教えるよ。

 奈須は、仕方なく診療報酬の本を預かった。遅番の昼休みであった奈須は休憩室でお弁当を食べながら、診療報酬の本を開いた。平均在院日数については「入院料等」のところに書いてあるということだったので、早速見てみると表1)のような通則に行き当たった。

 診療報酬は難しいとは聞いていたがこれではさっぱり意味が分からないと実感した。読み進めていくと、やっと、表2のような自分に関係のありそうな部分がでてきた(表2)

奈須:うちの病院は、一般病棟の10対1だから、”10対1入院基本料”が正式名称なんだ・・・。注3からは、入院期間に応じた加算が算定できることも分かった。14日以内であれば428点ということは、10対1だと入院基本料1300点に加算して、毎日1728点となるのね。注6を見ると、さらに入院基本料等加算という診療報酬点数が加算できるんだ。こうやっていくと、結構、点数が高くなるなぁ、入院費は。これだけ医療費をもらってるとなると、私たちが頑張らなくちゃ。

 一般病棟の部分を読み終わるとちょうど、昼休みも終わったため、仕事に戻った。なんだか新しい世界が見えてきて、カンファレンスで主任から「休憩中に何かいいことでもあったんですか?」と言われてしまうほど、ニコニコしていた奈須であった。